宝塚歌劇団が現在上演中の宙組ショー「BAYSIDE STAR(ベイサイド・スター)」において、終盤に使用されていた軍歌「海ゆかば」の歌唱を中止したことが大きな話題となっています。
この決定は、観客やファン、ネットユーザーから「軍歌の使用は適切か?」という疑問の声を受けての対応であり、今後の東京公演では楽曲自体が差し替えられる予定です。
戦時中に広く使われた「海ゆかば」は、太平洋戦争の象徴とも言われる官製軍歌であり、戦意高揚のためのメディアにも用いられた歴史があります。
芸術表現としての選曲か、それとも歴史認識の欠如か――。
今回の宝塚の判断は、現代社会における舞台演出の在り方に一石を投じています。
宝塚歌劇団と軍歌「海ゆかば」使用の経緯
2025年9月に宝塚大劇場で上演された宙組公演「BAYSIDE STAR」では、ショーのクライマックスにおいて、トップスター桜木みなとさんが黒燕尾服で「海ゆかば」を独唱する演出がありました。
「海ゆかば」は、奈良時代の歌人・大伴家持による万葉集の一節をもとにした楽曲であり、天皇への忠誠や戦死者への鎮魂の意味が込められています。
しかし同時に、太平洋戦争中には大本営発表やラジオ放送で多用され、「第2の国歌」とも称された象徴的な軍歌でもあります。
こうした背景を踏まえ、「なぜ今この曲を舞台で使用したのか」「芸術として成立するのか」という疑問が観客やネット上で噴出。
神戸新聞が歌劇団に問い合わせたところ、「戦争を肯定する意図は一切ない」との公式コメントが24日に発表され、同日から歌唱は中止されました。
引用:神戸新聞 NEXT
時代と表現のバランス
芸術作品において歴史的題材を扱うことは珍しくありませんが、それが「どのように」表現されるかは、時代の空気や社会的コンテクストに大きく影響されます。
「海ゆかば」は戦没者への鎮魂歌としての意味もある一方で、日本の戦争責任や軍国主義を想起させる曲でもあります。
そのため、現代の舞台で使用されることには、政治的・歴史的なメッセージが付随すると見なされやすいのです。
宝塚歌劇団のような大衆芸術の舞台であればなおさら、観客の多様な価値観に配慮した演出が求められます。
今回の判断は、芸術表現の自由と社会的責任の間で揺れる現代演劇における重要なケーススタディと言えるでしょう。
ネット上での反応と声
ネット上では、今回の件に関して、様々な意見が交わされました。
否定的な声としては、
・「鎮魂の意味があるとしても、軍歌を舞台で使用するのは不適切」
・「戦争を知らない世代に誤った歴史観を植え付ける恐れがある」
・「なぜ誰も止めなかったのか?」と演出過程への疑問
一方で、擁護的な声もあり、
・「芸術表現の一環として受け止めるべき」
・「歴史を風化させないためにも、こうした歌が使われること自体は意味がある」
といった意見も見られました。
いずれにしても、今回の宝塚の判断は、単なる演出の是非を超えて、「芸術と社会の距離感」についての問題提起となっています。

まとめ
宝塚歌劇団が軍歌「海ゆかば」の使用を中止した決定は、舞台芸術が時代とどう向き合うべきかという根本的な問いを私たちに投げかけています。
表現の自由が尊重されるべき一方で、その表現が持つ歴史的意味や社会的影響にも目を向けなければなりません。
観客1人1人が「なぜこの演出が問題になったのか」を考えることで、より深く作品を味わい、理解する機会となるはずです。
今後の宝塚公演や他の舞台作品においても、時代背景と観客の感受性の両面に配慮した演出が求められるでしょう。
当記事は以上となります。
コメント